「くしゃみ」

具志堅興清

2023年12月19日 12:24

6,407- ◎ 「くしゃみ」

 昨日、藤沢周平の「くしゃみ」という短編小説を聴きました。

 私が注目したのは、「くしゃみ」が爆発する直前の鼻の奥に起こる「むずがゆさ」です。

 実は、「くしゃみ」の生理作用で重要なのが、爆発の前触れの鼻の奥で生ずる「むずがゆさ」なのであります。

 「くしゃみ」は、古い東洋の医学用語では「ふんてい」と言います。

 「ふんてい」は、鼻の奥にある有害な「異物」や「冷気」を体外に吐き出すための大切な「発散作用」なのであります。

 私が子どもの頃、私が「クシャミ」をするたびに近くにいる母親は、「クスケー」という「まじない言葉」を発してくれました。

 直訳すると、「糞くらえ」という意味です。

 ちなみに兼好法師の「徒然草」の中にも、老女が「クソくらえ」を連発する描写があります。

 なお、体内の有害ガスが、まさに皮膚から体外へと放出される直前、皮膚上に「かゆみ」が起ります。

 藤沢周平が「くしゃみ」という小説のなかで、面白おかしく描写した鼻の奥の、むずがゆい「快感」は、体内の有害物が体外へ排除される直前の体の見事な表現なのであります。

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